コラム その11(8期スタート)“三方よし”とは言うけれど


業務がら色んな会社から転職をされて来られる警備員さんが我社では多く、前職の会社のHPをチェックする事もしばしば有る。必ず読むのは『企業理念』 多くの社長さんが記載しているのが“三方よし”もうひとつ
が“当社に関係するお客様、取引先、従業員やその家族など、すべての人の幸福を追求する”などと書かれている。ホンマかいな?・・と思う。大阪商人はその昔“買うての幸い、売っての幸せ”の『両方よし』の商いをしていた。私が社会人の第一歩に大阪を選んだのは、当時TVドラマで人気があった花登筺さんの原作【どてらい男(やつ)】を見て、生意気にも“商売の原点は大阪やな・・”と。 就職した創業70年を越す大阪のニットメーカーは兎に角品物に真面目な会社だった。”買うての幸い、売っての幸せ”を地で行く会社だったが、経営としては決して上手ではなかった様に思う。近江商人の十訓の中に『無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ』『正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ』とあり、この二つがどうもその会社には欠けていたように思う。 

8年で辞めた。三方よしとは『売り手よし、買い手よし、世間よし』の事であるが、売り手にとっては(儲け)買い手にとっては(満足度)そして製品そのものが(世間のお役に立つ)と言う事である。しかし買い手の満足度には『安くてエエ物』が出て来て相反する部分がある。昨今では加えて『働き手よし』が入り“四方よし”と言われる時代になってさらに高度なことになっている。また冒頭の他社が掲載している企業理念『当社に関係するお客様、取引先、従業員やその家族などすべての人の幸福を追及する』はカッコ良すぎて私には書けない。経営者が回り全員の幸福を追及するのは勝手だが、具体的にどうやって幸せにするんですか? って質問をしてみたい。私の若い頃は部下の全員を引き連れて、大きな会社にしてみんなを幸福にしたいと思って  いた「仕事キツ過ぎてついて行けません」「家庭が崩壊します」「銭の問題では有りません」「就職決まりました」などと言って辞めていく部下を『そうか・・・』と見送った。人には人の幸福の尺度とそれぞれの価値観があるんだと考えるようになった。 経営者のすべての人を幸せにする気構えは立派としても、そう言う大それた思いは心の中にさりげなく置いておく。 そして“四方よし”の取引にする為には『正直・奉仕・信用・品質・熱意・儲けの分配』の理念が強くあってこそ出来る事を我々はまず、忘れてはいけない。

令和1年10月1日
株式会社 セ ク ダ ム
代表取締役 竹 下 年 成